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プロジェクト概要

本データベースは、主として、独立行政法人医薬基盤研究所(当時)による先駆的医薬品・医療機器研究発掘支援事業の平成22年度(2010年度)採択プロジェクトの一つである「多層的オミックス解析による創薬標的の網羅的探索を目指した研究」を基にして構築されました。創薬標的の探索、開発が必要とされる主要な疾患について、各疾患を専門とする高度専門医療研究施設にて収集された病変部位等の臨床試料を対象に、ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボローム解析を行い、データを臨床情報などと比較・統合解析すること(多層的疾患オミックス解析)により、創薬標的候補を網羅的に探索しました。具体的には、以下の5つの研究課題に分かれて、研究を実施しました。

同事業のパンフレットはこちら→ https://www.nibiohn.go.jp/part/promote/fundamental/doc/pdf/report_h22.pdf

多層的疾患オミックス解析における、ゲノム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究

本研究ではゲノム情報に基づく創薬標的探索を分担し、SNPアレイや次世代シークエンサーを用いて、疾患の特性に応じて核ゲノムあるいはミトコンドリアゲノムを解析する。

多層的疾患オミックス解析における、エピゲノム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究

本研究ではエピゲノム情報に基づく創薬標的候補探索を分担し、1塩基解像度のゲノム網羅的DNAメチル化解析を行う。

多層的疾患オミックス解析における、トランスクリプトーム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究

本研究ではトランスクリプトーム情報を用いた創薬標的探索を分担し、次世代シークエンサーを用いた解析(RNA-Seq)、及びマイクロアレイ解析により、mRNAおよびmiRNAを網羅的に解析する。

多層的疾患オミックス解析における、プロテオーム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究

本研究ではプロテオーム情報に基づく創薬標的探索を担当し、疾患の特性を反映する組織、細胞などについて、適切な前処理法を開発して、多検体の定量プロテオーム解析を行う。

多層的疾患オミックス解析における、メタボローム情報に基づく創薬標的の網羅的探索を目指した研究

本研究ではメタボローム情報を用いた創薬標的探索を分担し、イオン性及び疎水性代謝物の網羅的解析を分離法の異なる質量分析法にて、また高濃度代謝物の網羅的解析を核磁気共鳴スペクトル法にて行う。




プロジェクトの基本コンセプト

2001年のヒトゲノム塩基配列草案の発表前後から、ヒトゲノムとその個人差に関する情報とデータベースの整備、マイクロアレイ・高速シークエンサー、質量分析計等の解析技術が目覚ましい進歩を遂げている。これらの先端的な、生命情報関連分子を網羅的に解析する研究戦略、すなわちデータ駆動型科学の手法を最大限に、かつ適切に活用することが疾患研究の次なる飛躍を遂げるための必須課題の一つと考えられる。ここで重要なことは、生命現象を司る分子情報はゲノムだけではないこと、そしてオミックス解析だけでは疾患研究にならないことである。ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームの、少なくとも5つの主要なオミックス解析のデータを統合的に扱い、臨床病理・薬理学的情報などと付き合わせて分析することで、疾患や治療応答性等の重要な問題の本態を解明する糸口になると考えられる。まだまだ人類が持っている知識は限られており、データ駆動型科学を標榜するに足る質・量・連結性を備えたデータが不足しているという事実を認識すべきであろう。分子を網羅的に観察・分析することで、既存の常識の範囲・延長で思いつく仮説に依存しない、研究開発の突破口を開くことができる。一方、限られた症例で膨大な分子を調べることによる「偽陽性」も、複数のオミックス解析を多層的に重ね合わせることで抑制し、機能解析や臨床試験等の次の段階に進む優先順位の高い創薬標的候補を的確に絞り込むことができると考えられる。

創薬の出発点は、まず第一に、その疾患の本態に関わる分子機構を明らかにすることである。疾患の発生と進展の鍵となる分子あるいは分子経路が同定できれば、それが分子標的診断・治療の標的候補になると考えられる。第二に、必ずしも疾患の原因・本態に直結しなくても、日常臨床でアクセス可能な検体について、その疾患に特徴的・特異的な分子異常や変動が同定できれば、バイオマーカー等診断薬開発の標的となると考えられる。

新しい予防・診断・治療法を必要とし、そのための研究開発のさらなる推進、あるいはその突破口として、このような多層的オミックス解析に期待している疾患は数多くある。中にはがんのように既に多層的疾患オミックス研究の有用性が数多くの成功例として示されている疾患もあれば、疾患とオミックス技術の組み合わせによっては、そもそもどのような対象組織を何症例、どのように採取・保管・前処理すればよいかが、少なくとも本プロジェクト開始時点では未確立であったものもある。本プロジェクトの特長であり、また難易度を高めているのは、複数の疾患を並列で解析している点で、既存の成功例が世界にも見当たらず、疾患オミックス解析の手法や意義が明らかでない疾患に対しても先導的に取組んできた。1)各疾患の専門研究者が所属する6ナショナルセンター(NC)のバイオバンク等から、臨床試料を共同研究体のオミックス解析拠点に集める。2)解析拠点で集中して技術開発・検討を行い、安定した品質で、効率よく分子網羅的データを取得する。3)そのデータは各個別疾患解析担当者に報告され、そこでさらなる検証セットの試料を用いた解析や、機能解析等、創薬標的候補絞り込みのための研究が行われるとともに、4)解析拠点で得られたデータの一部は、個人情報の保護等に関する十分な配慮のもと、最終的に統合データベースから広く発信される、という広範かつ先駆的な計画を、医薬基盤研究所の支援の下に実施できた。本Integrative Disease Omics Databaseは、この4)のために設置されたものである。

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